ロコモティブシンドローム(ロコモ)

運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を 「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群)=ロコモといいます。

ロコモティブシンドロームとは、英語で移動することを表す「ロコモーション(locomotion)」、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(locomotive)」からつくった言葉で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。ロコモとはその略称です。

人間が立つ、歩く、作業するといった、広い意味での運動のために必要な身体の仕組み全体を運動器といいます。運動器は骨・関節・筋肉・神経などで成り立っていますが、これらの組織の障害によって立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態が、ロコモなのです。
ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。

要支援、要介護になる原因のトップは転倒、骨折や関節の病気など運動器の故障(約25%)です。続いて、認知症(約18%)となっています。

1)自覚症状がなくても要注意
便利な移動手段の多い現代社会では、日常生活に支障はないと思っていても、ロコモになっていたり、すでに進行したりしている場合が多くあることが分かっています。また、高血圧など生活習慣病のある人は比較的若い頃からロコモの原因となる病気にかかりやすいことも分かってきました。
いつまでも歩き続けるために、運動器を長持ちさせて健康寿命を延ばしていくことが大切なのです。

2)ロコモと運動習慣
運動器は、ふだんの生活で身体を動かして負荷をかけることで維持されます。そのため、ロコモを防ぐには、若い頃から適度に運動する習慣をつけ、運動器を大事に使い続けることが不可欠です。

3)健康寿命を延ばすには?
健康寿命とは、健康で日常生活を送れる期間のこと。日本は世界有数の長寿国として知られていますが、平均寿命(男性81歳、女性87歳)と健康寿命(男性72歳、女性75歳)の間には男性で約9年、女性で約12年の差があります。この期間は、健康上の問題で日常生活が制限されたり、何らかの助けを必要としたりしていることを意味し、さらに悪化すれば介護が必要になる可能性が高まります。
健康寿命を延ばし、平均寿命と健康寿命の差を短縮するためには、要支援・要介護になる前から「運動器の問題で日常生活が制限され」ている状態を改善することが必要です。このことがまさにロコモ対策といえます。

4)ロコモかどうかはどうやって確かめる?
ロコモかどうかは3つのテストで判定します。
これを「ロコモ度テスト」と呼んでいます。
①片脚または両脚でどれくらいの高さの台から立ち上がれるかを測る「立ち上がりテスト」です。
②できるだけ大股で2歩歩いた距離を測る「2ステップテスト」です。
③運動器の不調に関する25の質問に答える「ロコモ25」です。
これらのテストの結果により、ロコモでない状態ロコモが始まっているロコモ度1ロコモが進行したロコモ度2ロコモがさらに進行して社会参加に支障をきたしているロコモ度3を判定できます。

5)ロコモを進行させないための対策は?
ロコモの要因は、運動器の病気運動器の能力の衰え運動器の痛みなどさまざまです。これらの要因がつながったり、合わさったりすることでロコモになり、進行すると社会参加・生活活動が制限され、ついには要介護状態に至ってしまいます。ロコモと判定された場合、原因は何かを見極め、状態に合わせて適切に対処することが必要です。
尚、運動器の病気には、骨(骨折、骨粗しょう症)、関節軟骨・椎間板(変形性関節症、変形性脊椎症)、神経・筋肉(神経障害、サルコペニア)、脊柱管狭窄症などがあります。
運動器の痛みや力の衰えには、痛みやしびれ関節可動域制限柔軟性低下姿勢変化筋力低下や麻痺バランス能力低下などがあります。
対処法には病気の予防病気に対する薬物や手術による治療運動器の力の衰えに対する筋力やバランス力のトレーニング痛みや痺れに対する治療栄養不足や栄養過多の改善などがあります。また生活習慣病の予防やその治療を合わせて行うことも必要です。

ロコモは回復可能なのが最大の特徴。きちんと対処すれば、不安や不自由なく歩けるようになります。

6)ロコトレ
いつまでも元気な足腰でいるために、「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」を続けることが肝心です。
ロコトレはたった2つの運動「片脚立ち」「スクワット」です。
「ロコモ」といっても、程度は人それぞれです。ご自身に合った安全な方法で、無理せず行いましょう。

(ロコモONLINE 日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト 参照)

《関連ページ》

画像の説明