梶が谷駅前内科クリニック
公式ブログ
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薬剤性腎障害とは、「薬剤の投与により、新たに発症した腎障害、あるいは既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合」と定義されます。
薬剤性腎障害には、発生機序に基づき、腎に作用して直接の毒性を示す''①中毒性腎障害②アレルギー機序による過敏性腎障害、③薬剤による電解質、腎血流減少などを介した間接毒性、④薬剤による結晶形成、結石形成による尿路閉塞性腎障害に分類されます。
①中毒性腎障害
基本的には用量依存的であり、薬剤排泄経路の確認と、腎機能および年齢による投与量の調整、脱水への注意。
尿細管毒性物質による急性尿細管壊死 アミノグリコシド系抗菌薬、ヨード造影剤、バンコマイシン等
慢性間質性腎炎 NSAIDs等
血栓性微小血管症 カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)等
近位尿細管障害 アミノグリコシド系抗菌薬等
遠位尿細管障害 ST合剤、カルシニューリン阻害薬等
②アレルギー機序による過敏性腎障害
典型的には間質性腎炎(尿細管間質性腎炎)の形をとる。あらゆる薬剤が原因となりうるが、国内では抗菌薬(抗生物質)、H2受容体拮抗薬、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)等が多いとされる。近年の国外の報告で高齢者でのプロトンポンプ阻害薬による影響が指摘されている。
基本的には非用量依存的であり、投与量や投与期間にかかわらず発症する。
③薬剤による電解質異常、腎血流量減少などを介した間接毒性
薬剤による電解質異常
ビタミンD製剤やカルシウム製剤による高カルシウム血症は浸透圧利尿を介して多尿や腎機能低下をきたしうる。また利尿剤や下剤による慢性低カリウム血症は尿細管障害を介して腎機能低下をきたしうる。
腎血流量減少
NSAIDsは、腎血流を保持する腎血管拡張作用等を有するプロスタグランジン(PG)合成を担うシクロオキシゲナーゼを阻害する。また、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は腎糸球体の輸出細動脈の拡張により糸球体濾過量を減少させる。
その他の間質毒性
抗精神病薬、脂質異常症治療薬による横紋筋融解症は、ミオグロビンによる急性尿細管壊死をきたしうる。
④薬剤による結晶形成、結石形成による尿路閉塞性腎障害
結晶形成による尿路閉塞
アシクロビル、メトトレキサート等の溶解度の低い薬剤が腎で濃縮され、結晶化し尿細管を閉塞する。
結石形成による尿路閉塞
抗腫瘍薬による腫瘍崩壊症候群では、腫瘍の破壊に伴い大量のプリン体が血中に放出され、生成された大量の尿酸が尿中に排泄され、結石化し尿路閉塞に至る。
薬剤性腎障害のCKDへの進展形式
CKDの腎原疾患として、生活習慣病ほど頻度は高くないが薬剤性腎障害があげられる。
薬剤性腎障害がCKDに進展する場合には、1つには、薬剤性腎障害による急性腎障害が発症し、原因薬剤を中止しても腎機能が回復せずに、非可逆的に進展するパターン。もう一つは、慢性的に緩徐に非可逆的に薬剤性腎障害が進行する進展するパターンである。
非可逆性薬剤性腎障害のパターン
①直接的腎障害機序
薬剤そのものが直接的に腎障害を引き起こす
②複合的腎障害機序
一つの薬剤が一つの腎障害機序のみがあるわけではなく、いくつかの腎障害機序が一つの薬剤から生じる場合もある。
③間接的腎障害機序
薬剤そのものには腎障害性はないが、間接的に非可逆的な腎障害を惹起し、CKD発症機序につながっているのではないかと考えられる薬剤障害が一部の薬剤で想定されている。
近年、プロトンポンプ阻害薬(PPI)がCKDの一発症因子である可能性が疫学調査から示唆されている。ただし、行政機関データを用いた観察研究から導き出された結論であり、PPIがCKDの直接的な原因となることを証明したものではない。PPIのCKD発症のメカニズムとして、低マグネシウム血症がCKD症例の血管石灰化を促進する可能性や、一酸化窒素の産生抑制を誘導するADMA(asymmetric dimethylarginine)の上昇をもたらす可能性により、腎血流が低下し、CKDが進行するのではないかと想定されている。
各論
A.鎮痛薬
NSAIDsによる腎障害:
一般的な腎障害は、アラキドン酸経路におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害に起因する虚血性腎障害を呈します。虚血性腎障害以外に、急性間質性腎炎、間質性腎炎を伴うネフローゼ症候群、急性尿細管壊死を発症することがあります。
予防法は、十分な水分補給など適切な腎血流の保持となり、発症した際の対処法は、NSAIDsの中止と適切な腎血流の保持。
NSAIDsによる急性腎障害が通常2~7日間で回復し、重篤な場合であっても数日から数週間で回復することが多い。
COX-2選択阻害薬と非選択的NSAIDsの長期投与においても腎機能低下を同様に発症させるため、COX-2選択阻害を含むNSAIDsの漫然とした長期投与は慎む必要がある。
COX-2選択阻害薬:
COX-2選択阻害薬と非選択的NSAIDsでは、腎障害発症率に関しては差がないという報告がほとんどです。
しかしCOX-2選択阻害薬の中で唯一、セレコキシブに関しては腎機能を悪化させないという報告がある。
アセトアミノフェン:
アセトアミノフェンは、NSAIDsと異なり、末梢のプロスタグランジン(PG)の合成を抑制しないため、急性腎障害を起こすことはないが、乳頭壊死によるいわゆる鎮痛薬腎症を起こすことがあります。ただし、アセトアミノフェン単独では乳頭壊死を起こすことはなく、鎮痛剤を複数含有するOTC薬の複合剤(アスピリンとの合剤)が原因であると考えられており、数㎏以上の鎮痛剤複合剤の10年前後にわたる長期連日大量服用により発症しうる。
B.抗菌薬
抗菌薬による腎障害
抗菌薬による腎障害は、抗菌薬の血中濃度に依存するもの(特に、アミノグリコシド系、バンコマイシン塩酸塩などで急性尿細管壊死)、あるいは低濃度でも長時間血中に存在することにより腎に蓄積して障害を起こすもの、アレルギー性に障害を起こすもの(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、モノバクタム系、ニューキノロン系、マクロライド系、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系、リファンピシンなどは、急性尿細管間質性腎炎)、結晶析出による尿細管閉塞性腎不全をきたすもの(抗ウイルス薬、シプロフロキサシンなどは腎後性急性腎障害)、尿細管炎を起こすもの(テトラサイクリン系など)、ANCA関連腎炎をきたすものなどがあります。
C.生活習慣病治療薬
降圧薬(高血圧治療薬)
レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬による腎障害(急性腎障害)、電解質異常(高カリウム血症)
CKDでの血圧管理におけるRA系阻害薬の適応
糖尿病非合併CKD(糖尿病がないCKD)では①蛋白尿(ー)の場合は、RA系阻害薬、カルシウム拮抗薬、利尿剤を第一選択薬とし、②蛋白尿(+)の場合は、RA系阻害薬が第一選択薬として推奨される。
糖尿病合併CKD(糖尿病があるCKD)では蛋白尿の有無にかかわらず、RA系阻害薬が第一選択薬として推奨される。
CKD患者に対するRA系阻害薬投与時の注意
腎糸球体の輸出細動脈には輸入細動脈よりも多くの1型アンジオテンシンⅡ受容体が分布しているため、輸入細動脈以上に輸出細動脈が拡張し、糸球体内圧が低下し、eGFRは減少しやすくなる。
ただし、eGFRの低下は、薬理作用としての糸球体内圧減少を反映して、逆に長期的には腎機能低下に対する抑制効果が得られる可能性が高いとされる。
また、1型アンジオテンシンⅡ受容体を介した副腎からのアルドステロン分泌も抑制され、高カリウム血症がみられることがある。
RA系阻害薬による腎障害リスク因子
高齢者、動脈硬化性腎動脈硬化症(特に両側性)、NSAIDs、シクロスポリン投与、心不全、脱水(特に高齢者では夏場や下痢、食思不振、過度の減塩時)、尿路異常(特に水腎症)があり、注意が必要である。
血糖降下薬(糖尿病治療薬)
腎機能障害時の血糖降下薬の使い方と注意点
腎機能障害を伴う患者には、ミグリトール以外のαグルコシダーゼ阻害薬、レパグリニド、ミチグリニド、DPP-4阻害薬が使用しやすい。
スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、フィブラート系薬(脂質異常症治療薬)
スタチンによる腎障害は非常にまれであるが、スタチンによる横紋筋融解症からの二次的な腎障害が有名です。
スタチンが筋障害を引き起こす正確な機序は解明されていないが、ミトコンドリア機能障害による直接的な筋障害が示唆されスタチン関連筋症状として知られる。
腎機能障害時の脂質異常症治療薬の注意点
ロスバスタチンは腎機能調整が必要で、フィブラート系のフェノフィブラート、べザフィブラートは高度の腎機能低下の場合は投与禁忌。
ロスバスタチン以外のスタチン、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチ二ブ、陰イオン交換樹脂は腎機能調整を必要とせず、腎不全でも安全に使用できる。
尿酸低下薬(高尿酸血症、痛風治療薬)
高尿酸血症はCKDの進展や高血圧との関連が示唆されています。腎機能障害時の高尿酸血症は積極的に治療すべきと考えられます。
高尿酸血症改善薬には、尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬があり、腎障害時の尿酸低下薬は尿酸生成抑制薬が使われることが一般的ですが、アロプリノールは腎機能調整が必要で、フェブキソスタット、トピロキソスタットは投与量調整することなく使用できます。
D.その他の薬剤
骨粗鬆症治療薬
腎障害時の骨粗鬆症治療薬の使い方と注意点
CKDステージG1~G3まではなら腎機能正常者と同様です。
CKDステージG4~5では、使用できる薬剤が限られます。骨粗鬆症治療薬には、腎排泄薬剤が多く、高度腎障害例では禁忌もしくは慎重投与とされる。
ビスホスホネート薬は禁忌または慎重投与、デノスマブ、SERM、エルデカルシトール、副甲状腺ホルモン薬も慎重投与となります。
参考文献:「薬剤性腎障害(DKI)診療Q&A 診断と治療社」
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