2型糖尿病の薬物療法

糖尿病がある人は、細小血管症・大血管症のみならず悪性腫瘍や認知症、感染症など多くの合併症や併存症を持つことが多いいです。
近年の新規の糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬をはじめとする薬剤に心・腎・血管等の臓器保護効果があることが明らかとなっています。
また、本邦で超高齢化社会を迎えており、高齢者で糖尿病がある人も増えていますが、一般に高齢者は腎機能・肝機能などの臓器機能が低下しており、また、糖尿病自体がサルコペニア、フレイル、認知症などのリスクもあり、個々に応じた安全な薬剤選択が重要になっています。
また、肥満患者がほとんどを占める欧米と異なり、本邦および東アジアにおける糖尿病患者は個々に異なる病態を有しており、これに即した独自の薬物治療が求められてきます。

欧米の2型糖尿病症例では、そのほとんどが肥満を合併しており、内臓脂肪蓄積に伴うインスリン抵抗性を特徴とする症例が中心であったことから、インスリン抵抗性改善薬であるメトホルミンを第一選択と位置付けていました。
一方、本邦を含む東アジア諸国における2型糖尿病症例では、欧米と同様に肥満のある症例もある一方、肥満を認めない症例、つまりインスリンの分泌不全が病態の主体である症例も少なからず存在しています。
遺伝学的背景や食習慣の違い、あるいは腸内細菌叢の違い等によると考えられます。

2型糖尿病の薬物治療のアルゴリズム
インスリンの適応の決定
インスリンの適応には、絶対的、相対的適応があり、前者には、①インスリン依存状態②高血糖緊急症③妊婦の症例④重度の肝障害・腎障害のあるとき⑤重症感染症・外傷・全身麻酔を要する周術期管理の症例があり、後者には、①糖毒性を積極的に解除する場合②インスリン以外の糖尿病治療薬で十分な血糖管理ができない場合などがあります。

目標HbA1Cの決定
糖尿病治療の中心的な目標として、糖尿病合併症の発症・進展の予防があります。
熊本宣言2013では、非高齢者の糖尿病合併症予防のための管理目標としてHbA1C7%未満が設定され、高齢者の糖尿病患者では、低血糖予防を重視した血糖管理目標が定められていました。

病態に応じた薬物選択
インスリン抵抗性とインスリン分泌低下のいづれかが糖尿病の主病態であるかの判断は、肥満の有無を評価します。
肥満の有無自体はBMIで判断しますが、インスリン抵抗性の主因は内臓脂肪の蓄積であり、腹囲の測定を行うことが望ましいです。
さらに、インスリン抵抗性の評価としてHOMA-IR等の指標が病態をより正確に反映するとされています。

安全性への配慮
低血糖リスクが高い薬(SU剤、グリニド薬)、肝機能・腎機能障害等を合併する際に注意する薬剤(腎機能障害では、SU剤、チアゾリジン薬、腎排泄型のグリニド薬)を除外します。
腎機能障害がある場合に、グリニド薬を一律に避けるのではなく、腎排泄型の薬剤を避けることとしており、また、心不全を合併する症例では、チアゾリジン薬とビグアナイド薬を避けるようにしているが、急性心不全等を除き、むしろ有効性を支持する報告も見られる。

Additional benefitの考慮
SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が心・腎・血管等の臓器保護効果を有することが報告されており、優先的に考慮することが示されています。
チルゼパチドについても臓器保護効果を評価する前向き研究が進行中です。
さらに、MASLDに対してはチアゾリジン薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チルゼパチドが病態改善に寄与することが示唆されています。

患者背景に応じた薬剤選択
糖尿病診療においては、血糖管理のみならず血圧、脂質、体重等多因子への介入が重要とされます。
ただし、内服薬の増加による費用負担の懸念もでてくるため、コストを考慮した治療薬の調整も必要になります。
また、グリニド薬やαグリコシダーゼ阻害薬をはじめ、1日2回以上の服用や食前の服用が必要なものもあり、服用が難しい症例では、服用方法が容易な薬剤の調整が必要になります。

治療調整後の評価
3か月ごとを目安に評価を行うことが推奨されていますが、目標を達成しない場合は、食事療法や運動療法についての確認・再指導や薬物療法の見直しも行いつつ、血糖管理の悪化が内因性インスリン分泌能の経時的な低下に起因している可能性も考慮し、インスリン適応の再評価も行うようにします。

参照文献:「代謝領域 2型糖尿病治療のアップデート 日本内科学会雑誌 114④ 日本内科学会」

《関連ページ》

画像の説明