筋委縮性側索硬化症

筋委縮性側索硬化症(ALS)は上位および下位運動ニューロンの障害が進行する疾患で、筋力低下、筋萎縮、線維束性収縮、構音障害、嚥下障害、呼吸筋麻痺を呈する代表的な神経難病です。
発症から2~5年で死亡あるいは人工呼吸器による補助換気が必要になる「治らない」神経疾患の代表的なものであり、多くの薬剤が開発中で治験も継続して実施されています。
2024年にALSの新規治療薬が2剤承認されました。
そのうちの1剤は遺伝子変異をもつ患者に対する核酸医薬です。
これらの2剤の治験の結果から早期介入の重要性がより認識されるようになってきました。一方、ALSは進行して典型的な症状がそろえば診断は難しくないですが、早期の診断が難しいことも少なくないです。
またALSは上記のような運動ニューロン障害による症状以外の非運動症状も生じるため、その対応を求められます。

1.ALSの症状
ALSは上位および下位運動ニューロン障害を生じそれを反映した症状を呈します。上位運動ニューロン障害によって、深部腱反射亢進、病的反射(バビンスキー徴候、チャドック徴候)、手指屈曲反射(ホフマン反射、トレムナー反射)、痙縮などを認める。
下位運動ニューロン障害によって、筋力低下、筋萎縮、線維束性収縮を認め、これらを主訴として受診することが多いです。ALSは最終的に全身の筋力低下を呈しますが、初期段階では限局した部位での障害にとどまることが多いです。筋力低下は横隔膜や肋間筋にもおよび呼吸機能低下をきたし、補助換気を要するようになります。
自覚的に呼吸苦を全く訴えていなくても呼吸機能検査で肺活量が低下していることもあります。
母子球筋や第一背側骨間筋が萎縮するのに対して小指球筋が比較的保たれるsplit handが、ALSに疾患特異性が高い所見です。
上位あるいは下位運動ニューロン障害が脳幹部におよぶと球麻痺(構音障害、嚥下障害)を呈します。下位運動ニューロン障害による場合は真性球麻痺とよび舌萎縮を認めます。上位運動ニューロン障害による場合は偽性球麻痺とよび舌萎縮を認めず下顎反射亢進、情動調節障害などを認めます。

2.ALSの診断治療
ALSの治療薬として本邦では1999年にリルゾール、2015年にエダラボン、2024年にメコバラミンとトフェルセンが承認されています。
これらの薬剤の効果はいづれも限定的であり、リハビリテーションを継続するとともに球麻痺に対しては胃ろうからの経管栄養や意思伝達装置の導入、呼吸機能低下に対しては人工呼吸器による補助換気を検討します。

1)リルゾール
リルゾールは、シナプス終末からのグルタミン酸放出阻害作用、興奮性アミノ酸受容体との非競合的阻害作用、電位依存的ナトリウムチャネル阻害作用を有し、神経を保護します。朝夕食前に50㎎製剤を内服します。効果としては、約80日の生存期間延長を認めます。重篤な肝機能障害がある場合は禁忌です。

2)エダラボン
エダラボンは抗酸化作用を有し、以前から脳梗塞急性期に保険適応がありました。点滴の場合は1日60㎎を初回14日間、1回1時間かけて点滴静注しその後14日間休薬します。次の14日間のうち10日間投与と14日の休薬期という28日間のサイクルを続けます。効果としては、改訂ALS機能評価尺度スコアの低下抑制は認めますが、非気管切開生存期間の延長や呼吸機能の低下抑制は認めないです。重篤な腎機能障害を認める場合は禁忌です。
2023年4月から経口薬も販売されています。成人に1回5ml(エダラボンとして105㎎)を空腹時に1日1回経口投与します。

参考文献:
「日本内科学会雑誌 115⑧ 進化する難病診療 日本内科学会」

《関連ページ》

画像の説明

''''
''''