廃業の危機を味わって本気で取り組んだ 人を大切にする 三方よし経営 八天堂 森光孝雅著

広島県三原市で「たかちゃんぱん屋」を開店し、順調に売り上げを伸ばし、広島県内を中心に焼き立てパン店を13店舗経営する。しかし、無理な拡大によって、倒産の危機に陥る。その危機を乗り越え、試行錯誤の末、新しいスイーツパン「くりーむパン」を開発した八天堂の森光孝雅社長の著書。
はじめに
「人生は今日がはじまり、ここから挑戦」 著者が座右の銘としている言葉。

八天堂の信条
八天堂は社員のために
お品はお客様のために
利益は未来のために

「自分よし、相手よし、第三者よし」の三方よし
人のため、社会のため、そして未来のために「三方よし」

第1章 挑戦と失敗 その中から見えてきたもの

事業を拡大していく中で「職人が店を広げようとするな、人が育ってないのに店舗をどんどん出しとったら、必ず潰すぞ」という父からの言葉があった。
1号店をオープンしてから10年経過したころに、業績の悪化を受けて現場の負担が増え、ブラック化していた。起死回生の新店舗での増収増益も実現しなかった。
怖いもの知らずだった絶頂から一転、坂道を転げるように落ちたどん底。そんな絶望の淵で触れた家族の愛情、そして銀行の計らいがあり、そこから今へ続く八天堂の第二の創業がスタートした。

第2章 私の夢から公の志へ

八天堂という会社が何のために存在するのか
八天堂の信条(クレド)に、不易のもの(いつまでも変わらないもの)として、八天堂は社員のために、お品はお客様のために、利益は未来のために存在することを明記している。
人の成長より事業の拡大を優先させれば、いつか必ず行き詰る。
参考)不易流行とは、不易はいつまでも変わらないもの、流行は時代の変化に合わせて変えていくもの。

美味しいパンで周りを笑顔にしたくて始めたはずなのに、頑張れば頑張るほど、家族も社員もお客さんも、どんどん悲しい顔になっていく。
「三方よし」は、自分がよくなるだけでなく、社員やお客様、お取引先など、事業にかかわるステークホルダー(利害関係者)全体が満足し、笑顔になることを目指す考え方。
なぜ、私の事業は「三方悪し」になってしまったのか。私自身に何のために頑張るのかという事業の目的、経営の拠り所となる座標軸が欠けていたからです。

お客様を喜ばせようと思ったら、まずは社員を喜ばせないとダメだということに気づいた。さらに、お客様に愛され続ける店になれるには、いい商品があるお店、サービスがいいお店、ほかにそこにいい出会いがあるはずです。あの笑顔、話すとなぜか元気になれる店員さん。そういう人との出会いです。

お品は100パーセント、お客様のためにあります。お客様のためにといいながら、つい自分たちのつくりたいものをつくったり、思いのこもらないお品ができてしまうこともあります。
お客様の消費行動を調べ、目的買いをする人の増加に気づいた。
一品を専門に扱う業態(いわば、ピーター・ドラッガーの「選択と集中」です)を思いつき、さらに、どの一品に集中するかは、ヨーゼフ・シュンペーターのイノベーション理論(あるものとあるものが結びついたときに、イノベーションが生まれる。そのあるものとは、どちらもスタンダードなものである)から、定番の「クリームパン」と食感としてスタンダードな「口どけの良さ」の二つを結びつけることにたどり着いた。今や八天堂の代名詞となった「くりーむパン」の誕生です。

お客様や販売会社が満足し、またメーカーである私ども八天堂も満足できる三方よしの値段はいくらなのか
利益は未来のために。未来を築くためには、適正な利益を得ることが絶対条件となります。利益があって初めて、社員よし、お客様よし、取引先よし、そして未来よしを実現できます。事業経営は、投資と回収の連続です。利益の儲け方も大事ですが、それ以上に利益の使い方に私はこだわっています。税引き後の利益で自己資本を積み増し、無理な借金をせず、事業を通じて得た利益の範囲内で投資をし、回収をしていく限り、会社の健康が損なわれることはまずありません。健全な経営があってこそ企業は永続でき、企業は永続してこそステークホルダーに貢献できる三方よしを実現できます。

第3章 八天堂の成長の源は「三方よしの経営」

自分よし、相手よし、第三者よし
三方よしは、もとは売り手よし、買い手よし、世間よしという近江商人の商売での心構えをまとめたものと言われています。近年の研究では、大正末期にモラロジーを創建し、自己と相手方と第三者すなわち一般社会とのすべての幸福の大切さを提唱した廣池千九朗の言葉であるとされている。

これからの時代、第三者には同時代のステークホルダーのみならず、未来の人も含んで考える必要があります。

第4章 三方よしの人づくり

会社の一番の使命は人づくりだと考えている。
関東大震災後の東京で、人間中心の都市復興を指揮した後藤新平は、「財を遺すは下 事業を遺すは中 人を遺すは上 されど財無くんば事業保ち難く 事業無くんば人育ち難し」 という言葉を遺しています。
仕事(スキル)より人間性(マインド)を重視
仕事ができてマインドがないのは×です。圧倒的に人間性を見ています。スキルは後からついてくるからです。

渋沢栄一は晩年に、慈善事業や教育事業に尽力し、商工会議所もつくっている。

第5章 三方よしの事業継承

経営者の必要な死生観
経営陣の中からトップを選ぶ必要が出てきます。自分がすべてを受け止め受け入れ、家族を含めてでもやりぬく覚悟のようなものがトップには必要です。
後継者育成は人材育成
変化はやはり若者がつくっていくわけで、イノベーションは若者にしか起こせません。
行動こそ真実
吉田松陰の言葉に、「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」実行の中にこそ真実があるのです。
一度きりの人生、何に命を使うのか
人生には限りがあり、しかも一度限りです。さらにいつ終わるかもわからない。死生観を持つと人生の密度が変わる(多摩大学名誉教授の田坂広志氏)。今日という一日が人生最後の日になるかもしれない。

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