糖尿病性腎症の治療

糖尿病性腎症の治療
糖尿病性腎症の治療薬は、従来、RAS阻害薬のみであったが、SGLT2阻害薬に加え、非ステロイド型MR拮抗薬であるフィネレノン、そして、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドの腎症抑制のエビデンスが明らかとなっている。

糖尿病性腎症は、日本における透析導入原疾患の第一位であり、約40%を占めています。
糖尿病性腎症の治療目的は、一つは末期腎不全への進行抑制(透析導入抑制)、もう一つが心血管イベントの発症を防ぐことです。

糖尿病性腎症は、慢性高血糖を基盤として糸球体硬化が生じ、腎機能が低下が進行する糖尿病合併症です。
糸球体硬化の最初のステップとして、糸球体基底膜の破壊が起き、分子サイズの小さなアルブミンから始まり、分子サイズの大きな蛋白の漏出につながります。これに伴い微量アルブミン尿(30mg/gCr以上300mg/gCr未満)、さらに、顕性蛋白尿(300mg/gCr以上)へと進行します。
慢性高血糖の状態では、糸球体輸入細動脈が拡張し、糸球体内に流入する腎血流量が増加し、糸球体内圧が上昇する糸球体過剰濾過が起こり糸球体高血圧の形成となります。
さらに、高血糖状態が続くと、糸球体構成細胞に大量のグルコース(糖)が流入し、細胞内代謝異常が生じます。このことが炎症機転を惹起し、メサンギウム細胞からの細胞外基質の産生を促進し、糸球体硬化を形成します。これに加え、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAS)の活性化され、ミネラルコルチコイド受容体(MR)が過剰に活性化され、腎線維化、酸化ストレス、炎症を惹起し、糖尿病性腎症の発症・進展を促進することが明らかになっています。

アルブミン尿の測定は、糖尿病性腎症の診断および治療介入(開始)に重要であり、また、アルブミン尿の有無は、糖尿病のリスク判定に重要です。同じ腎機能でもアルブミン尿(さらに蛋白尿)を有すると心血管イベントや末期腎不全のリスクが高くなることが示されています。

SGLT2阻害薬 糖尿病性腎症の第一選択薬
現在、SGLT2阻害薬は糖尿病性腎症治療における第一選択薬となっています。
糖尿病性腎症における糸球体過剰濾過を改善し、酸化ストレスや炎症を抑制することが知られており、さらに、ケトン体を上昇させることが腎組織の修復に働くことが報告されています。
SGLT2阻害薬は、糖尿病合併CKDのみならず、糖尿病非合併CKDにおいても腎保護作用が示されています。また、微量アルブミン尿期からSGLT2阻害薬にて介入することが重要であることが示されています。

RAS阻害薬は高血圧を合併している際に併用します。RAS阻害薬は輸出細動脈を拡張させ、糸球体高血圧の是正に有効です。

RAS阻害薬の併用によってもアルブミン尿が持続する場合には、非ステロイド型MR拮抗薬であるフィネレノンを併用します。RAS阻害薬を投与していても、さらにMR拮抗薬を併用するのは、一つはアルドステロンに依存しないMR活性化が糖尿病の腎組織では起きていること、もう一つは、RAS阻害薬の慢性投与に伴いレニン・アンジオテンシンに依存しない経路でアルドステロンが再上昇するアルドステロンブレークスルーが考えられるからです。

GLP-1受容体作動薬
GLP-1作動薬であるセマグルチド(皮下注射)では、腎保護効果が示されています。

多剤併用
糖尿病性腎症において多くの薬剤が有効であることが示されているが、多剤併用に関しては、通常の血圧管理に加え、RAS阻害薬、さらにSGLT2阻害薬、また、非ステロイド型MR拮抗薬を加えて3剤併用を行うことで加齢に伴う年間のeGFR低下速度に近づけることができる可能性が提唱されています。
また、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用でも、eGFR低下速度が緩やかになることが明かなとなっています。

参照文献:「代謝領域 2型糖尿病治療のアップデート 日本内科学会雑誌 114④ 日本内科学会」

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