ネフローゼ症候群における最近の話題と新規治療法

ネフローゼ症候群は、腎糸球体係蹄障害による蛋白透過性亢進による大量の尿蛋白の漏出と、これに伴う低アルブミン(低蛋白)血症を特徴とする症候群です。
一次性(原発性)ネフローゼ症候群には、微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、膜性腎症(MN)、膜性増殖性糸球体腎炎などがあり、二次性(続発性)ネフローゼ症候群には、その他の原因疾患(糖尿病、自己免疫疾患、感染症、薬剤など)があります。

微小変化型ネフローゼ症候群と抗ネフリン自己抗体
多くのMCNSやFSGSの病態に抗ネフリン抗体(ポドサイトのスリット膜構成蛋白であるネフリンに対する抗体)が影響している可能性が高く、抗ヒトCD20モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RTX)(Bリンパ球の増殖と機能を阻害する)が頻回再発型ネフローゼ症候群や難治性ネフローゼ症候群の一部に有効である理由が説明できるようになってきている。

巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)と遺伝子異常
FSGSは、1)原因不明の一次性(原発性)、2)原因疾患の二次性(続発性)、3)遺伝性、4)一次性・二次性は否定されるがネフローゼ症候群ほどの蛋白尿を有さない原因不明がある。発症時はMCNSと同じ経過をたどることが多いですが、ステロイド・免疫抑制薬抵抗性の臨床経過をとることが特徴です。
糸球体構成細胞の一つであるポドサイトに関連した分子の遺伝子異常からFSGSが起こることがわかってきました。
遺伝的要因として、ポドサイトのスリット膜構成蛋白の一つのポドシンをコードするNPHS2遺伝子や糸球体基底膜を構成するTypeⅣコラーゲンをコードするCOL4A遺伝子などの報告がされています。

膜性腎症に対するバイオマーカー
慢性腎症は、一次性膜性腎症と原因疾患に合併する二次性膜性腎症に大別されるが、一次性膜性腎症の自己抗体として、ポドサイトの発現蛋白であるM-type phospholipase A2 reseptor(PLA2R)やthrombospodin type-1 domain-containing 7A(THSD7Aに対する抗体が同定されたことから、腎生検検体の抗原染色や血中自己抗体測定により、一次性か二次性かの鑑別診断や疾患活動性の連続評価が可能になってきています。

ネフローゼ症候群の治療の進歩
現在、LDLアフェレシス療法の糸球体疾患への保険適用は、FSGSのほか、従来の薬物療法で効果が得られないMCNS、膜性腎症と難治性高コレステロール血症に伴う重度尿蛋白を呈する糖尿病性腎症、急速進行性糸球体腎炎と診断された全身性エリテマトーデスへと拡大されています。

小児難治性頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群にRTXが保険適用され、成人のMCNSだけでなく、一次性FSGS、一次性膜性腎症に対する治療のアルゴリズムにRTXが記載されている。

参考文献:「日本内科学会雑誌 114⑤ 慢性腎臓病診療におけるポイント 日本内科学会」

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