梶が谷駅前内科クリニック
公式ブログ
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糖尿病関連腎臓病
従来の糖尿病性腎症(DN)では、顕著なアルブミン尿が特徴的であり、末期に急激なGFRの低下を呈し、また、高度腎機能障害に至る前に網膜症や神経症を認めていました。近年、典型的なDNは減少し、アルブミン尿は軽度あるいは陰性であり他臓器障害を伴わずともGFRが低下するケースがよくみられます。
RAS阻害薬の普及や高齢化の進行などが一因と考えられますが、従来のDNの概念内に収まらないため、DKDの疾患概念が提唱されました。
DKDは高血圧が主な原因と考えられている腎硬化症とオーバーラップする部分もあります。
病態
通常は、血圧や有効循環血漿量が変動しても速やかに糸球体の自動調整能が働き糸球体内圧は一定に保たれています。この自動調整は、輸入細動脈の筋原性反応や尿細管糸球体フィードバック、RASなどの役割によります。腎血流が増加すると、筋原性反応として輸入細動脈が収縮、また、マクラデンサでのTGFを介しても収縮させ、糸球体内圧亢進を防ぎます。逆に、腎血流が低下した場合、マクラデンサでのTGFを介しレニン分泌が誘発されRASが亢進し、Na再吸収や糸球体輸出細動脈の収縮で、糸球体内圧の低下を防いでいます。
糖尿病患者では、細動脈硬化や自律神経障害などで筋原性反射が低下し、また、近位尿細管でのSGLT2発現亢進によるNa再吸収が亢進し、TGFが抑制されます。さらに、組織内のRASも活性化されています。そのため糸球体への血流が増えても輸入細動脈が収縮せず、一方、輸出細動脈が収縮するため糸球体内圧が大きく上昇し過剰濾過が起きます。この過剰濾過がDNの主な病態と考えられており、糸球体係蹄壁への負荷、基底膜の障害などで腎障害が進行し、高度なアルブミン尿を呈するとされいます。
一方で、DKDはより広い概念であり必ずしも過剰濾過が主病態とは限らず、動脈硬化、酸化ストレス、低酸素等も病態として含まれます。
動脈硬化が高度となると虚血性の障害も生じ、また、TGF抑制が生じるより先に輸入細動脈を含む動脈硬化が進行すると、糸球体内に流入する血流が減少しているため内圧が上昇せず過剰濾過が生じないため、アルブミン尿に乏しい腎障害となります。
治療薬
①レニン・アンギオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)
ACEIとARB
アンギオテンシンⅡやアルドステロンの作用を抑制するこで、降圧作用や心腎保護効果。
主な腎保護の機序は、アンジオテンシンⅡ作用抑制により糸球体輸出細動脈を拡張させ、糸球体内圧を低下させることです。
高血圧があり尿蛋白を認めるDKD患者には良い適応となります。
尚、両側腎動脈狭窄、またアルブミン尿に乏しいDKD患者でも腎動脈狭窄に類似した病態の場合は注意を要します。
②ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2阻害薬)
SGLT2阻害薬は、近位尿細管からのブドウ糖の再吸収を抑制することで血糖値の改善を示す血糖降下薬ですが、心保護、腎保護効果も認められるようになりました。腎保護作用では、既にRAS阻害薬が投与されている患者でも上乗せ効果がありました。
腎保護の機序は、主作用である近位尿細管でのブドウ糖とナトリウムの再吸収抑制によるTGFの適正化(強制的な抑制ではなく)を介して糸球体過剰濾過を抑制することが挙げられます。その他、酸化ストレス軽減、オートファジー改善、ケトン体産生によるプレコンディショニングなど多用な作用が想定されています。
ただし、過剰濾過が生じていた患者では投与開始で一時的なGFR低下するinitial dropが生じることが知られています。また、一定の体重減少効果も見られます。
③鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRB)
MRBは、鉱質コルチコイド受容体そのものを抑えることで、RASを阻害しても生じ得るアルドステロンブレイクスルーへも対応でき、またアルドステロン非依存経路での鉱質コルチコイド受容体への作用も抑制できます。
腎保護の機序は、アルドステロンによる糸球体過剰濾過の抑制やアルドステロン非依存経路による炎症・線維化の抑制を介していることが考えられています。新規MRBであるフィネレノンによる2型糖尿病DKD患者に対する腎保護効果が示されています。腎保護作用では、既にRAS阻害薬が投与されている患者でも上乗せ効果がありました。
④グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)
食事をすることで消化管から分泌されるホルモンをインクレチンと呼びますが、その1つであるGLP-1は主に回腸から分泌され、すい臓のα細胞・β細胞、消化管、中枢神経、心臓などに作用します。糖尿病患者では分泌が低下しているとされ、GLP-1RAはこの受容体を刺激することで血糖降下作用や食欲低下作用をもたらします。
近年は、もう一つのインクレチンであるグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)との合剤もあります。
参考文献:「日本内科学会雑誌 114⑤ 慢性腎臓病診療におけるポイント 日本内科学会」
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