梶が谷駅前内科クリニック
公式ブログ
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気管支拡張症
気管支拡張症は、気道壁の破壊と不可逆的な拡張を特徴とする慢性炎症性肺疾患で、咳嗽と粘性の喀痰を慢性的に訴え、増悪を繰り返しながら進行する予後不良な疾患です。
気管支拡張症の罹患率と有病率は、世界的の増加しており、高齢・女性を中心に増加傾向にあります。
原因疾患は、特発性、副鼻腔気管支症候群、肺非結核性抗酸菌症、呼吸器感染後(結核、重症肺感染症)、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、免疫不全症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、リウマチ疾患、遺伝性疾患など多岐に渡ります。
診断基準には、症状とCT画像の両方を満たす必要があります。
症状には、「週の大半の日に認める咳、痰、増悪の既往のうち2つ以上」、CT画像所見は、「気管支内腔または気管支壁の直径と隣接する肺動脈の直径の比が1.0以上である、気道の末梢への先細りが乏しい、肺野周辺部の気道が視認できる、のいづれか1つ以上」と定義されています。形態的画像分類では、円柱状、静脈瘤様、嚢状様が挙げられます。
現在の治療法は、喀痰調整薬、理学療法、およびマクロライド少量長期投与に限られています。
病態としては、従来の悪循環モデル(①慢性感染⇒②好中球性炎症⇒③粘液線毛クリアランス低下⇒④気道壁の傷害⇒さらなる慢性感染の悪化によって病態が進行)から、これらの4つの要因が順番は関係なく、相互に影響しあうことによって気管支拡張症の病態は進行するという悪性渦巻モデルが提唱されています。
好中球は、気道における主要な炎症細胞であり、プロテアーゼ(特に好中球エラスターゼ)を放出し、気管支拡張と損傷に寄与します。
喀痰は、下気道由来の分泌物が体外に排出されるもので、咳反射の誘因となって咳嗽により体外へ除去され、これらの分泌物は気道上皮を被覆し、防御機構の一部として機能しています。粘液と線毛の協調的な働きにより異物が排除される機構はMCCと呼ばれています。
肺の細菌叢は、感染症や炎症、免疫反応などによって変化しますが、疾患の増悪時に特徴的なのは、病原菌の増殖ではなくむしろ常在菌の減少であり、これが炎症の活性化に関係していると考えられています。
近年、気管支拡張症の原因として、好中球の再プログラミング化と呼ばれる好中球の異常な活性化が注目されています。
好中球の再プログラミング化を抑えることによって気管支拡張症の増悪を抑制する治療戦略が試みられています。
骨髄における好中球の成熟過程に関わるDPP-1(dipeptidyl peptidase 1,カテプシンC)を阻害するDPP-1阻害薬です。
気管支拡張症において、喀血は重要な死に至る可能性のある症候であり、血痰・喀血を繰り返す患者には外科的介入、気管支鏡による止血以外に、気管支動脈塞栓が有用です。
気管支拡張症と肺非結核性抗酸菌(NTM)症
肺非結核性抗酸菌症とは、慢性肺感染症であり、罹患率は増加しています。日本では、Mycobacterium aviumあるいは、Mycobacterium intracellulareが原因菌の約90%を占めています。両者は併せてMycobacterium avium Complex(MAC)と称されてきました。
NTM感染が気管支拡張症を引き起こす場合と気管支拡張症にNTMの感染を合併する場合、そして、その両者が考えられます。
NTM疾患には、①結節・気管支拡張型②繊維空洞型③孤立性肺結節型④全身性播種型⑤過敏性肺炎型の5つのタイプがあります。
肺NTM症の病態生理
肺NTM症では、環境因子と宿主因子が重要です。NTMは、水や土壌に存在するため、生活環境や自然環境などの環境因子の影響が考えられています。宿主因子は、気道因子(粘液線毛クリアランス)と免疫因子(免疫機能)に大別されます。
診断基準
A.臨床的基準
1.胸部CTで、結節性陰影・小結節性陰影や分枝状陰影の散布・均等性陰影・空洞性陰影・気管支または細気管支拡張陰影のいづれかの所見
2.他の疾患を除外できる
B.細菌学的基準
1.2回以上の異なった喀痰検体での培養陽性
2.1回以上の気管支洗浄液および肺胞洗浄液での培養陽性
3.病理組織検査で抗酸菌症に合致する所見を認め、組織または喀痰検体で1回の培養陽性。
肺MAC症の治療
経過観察のみで10%は自然に喀痰培養陰性化することも示されており、軽症例では経過観察は妥当でありますが、一方で、5年間の経過観察で50%の患者は悪化し、加療が開始されるとされており、無治療で経過観察する場合は、長期的な注意深い経過観察が不可欠となります。
空洞や高度な気管支拡張、症状(咳嗽、喀痰、血痰)がある場合には標準治療を実施する必要があります。
標準治療は、クラリスロマイシン/アジスロマイシンを中心とした多剤併用療法(クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン+エタンブトール+リファンピシン)です。
治療の成功は、4週間以上の間隔で3回連続して喀痰培養が陰性となることで、奏功した場合でも、再発を防ぐために、喀痰培養陰性化後も15~18か月の治療治療継続が推奨されています。
気管支拡張症とCOPD
気管支拡張症は、他の慢性気道疾患と重複することが多く、慢性閉塞性肺疾患(COPD)もその一つです。喫煙などの有害物質の長期暴露は防御機能低下と慢性感染を惹起し、続く慢性炎症は気管支拡張症の発症・進展に関与している可能性があります。
COPDの診断は、タバコを主とした有害物質の長期暴露歴と正常に回復しない呼吸機能検査での気流閉塞の存在が必須です。
COPDに合併した気管支拡張症については、COPD治療の基本である長時間作用型気管支拡張薬の使用に加え、気管支拡張症に対する効果的な治療を行う必要があります。
吸入ステロイドの付加使用については、COPDに慢性気道感染を合併した患者に対する使用が肺炎リスクの上昇と関連する報告など否定的な報告が多くあり、慎重な判断が必要となります。
参考文献:「日本内科学会誌 114⑥ 日本内科学会」
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