脂質異常症

脂質異常症の定義
LDLコレステロール値が140mg/dL以上
HDLコレステロール値が40mg/dL未満
中性脂肪(トリグリセリド:TG)値が空腹時採血で150mg/dL以上・随時採血で175mg/dL以上
non-HDLコレステロール値(総コレステロール値ーHDLコレステロール値)が170mg/dL以上

動脈硬化性疾患予防には、早期から脂質異常症に加え、メタボリックシンドローム、喫煙、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)等の包括的管理を行う必要があります。

生活習慣の改善
①禁煙
②体重管理
③食事管理
適切の総エネルギー摂取量と三大栄養素、ビタミン、ミネラルをバランス良くとる。
飽和脂肪酸、コレステロールを過剰摂取しない。
トランス脂肪酸の摂取を控える。
n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やす。
食物繊維の摂取を増やす。
減塩し、食塩摂取量を6g未満/日をめざす。
④身体活動・運動
中等度(3METs)以上の有酸素運動を中心に、習慣的に行う(毎日合計30分以上を目標)。
日常生活の中で、座位行動を減らし、活動的な生活を送るようにする。
有酸素運動の他にレジスタンス運動や柔軟運動も実施すること。
⑤飲酒
アルコールの摂取は、25g/日以下、あるいはできるだけ減らす。休肝日を設ける。

動脈硬化の臨床診断法
①形態学的検査
超音波検査(頸動脈プラークや内膜中膜(IMT)の肥厚、大動脈、下肢動脈など)、CT、MRI・MRA、カテーテルによる血管造影検査など
②血管機能検査
上下肢の血圧比(ABI:Ankle Brachial Index)、心臓足首血管指数(CAVI:Cardio-Ankle Vascular Index)

脂質異常症のスクリーニングおよび脂質異常管理目標

1)冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)または脳梗塞(アテローム血栓性)が既往にあるか?
あり⇒二次予防(再発予防)

2)糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、末梢動脈疾患(PAD)があるか?
あり⇒一次予防(発症予防)の高リスク管理

3)久山町スコアによる絶対リスク評価の合計点数は?最大19点

性別 男性⇒7点
血圧(収縮期血圧)160mmHg以上⇒4点など
糖代謝異常(耐糖能異常)あり⇒1点
LDLコレステロール 160mg/dl以上⇒3点など
HDLコレステロール 40mg/dl未満⇒2点など
喫煙 あり⇒2点
年齢別および合計点数により10年間の動脈硬化性疾患の発症確率(絶対リスク)低リスク(2%未満)、中リスク(2~10%未満)、高リスク(10%以上)が予測されます。

例・・
狭心症、心筋梗塞やアテローム血栓性脳梗塞既往あり⇒二次予防
糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患のいづれかあり⇒高リスク
40歳代 3点以上⇒中リスク
50歳代 8点以上⇒中リスク、19点以上⇒高リスク
60歳代 2点以上⇒中リスク、13点以上⇒高リスク
70歳代 0点以上⇒中リスク、8点以上⇒高リスク

リスク区分別脂質管理目標値

一次予防では、原則として3~6ヵ月間は生活習慣病の改善を行いその効果を評価した後に、薬物療法の適用を検討します。いづれの管理区分においてもLDL-C180mg/dl以上が持続する場合は生活習慣病の改善とともに薬物療法を考慮します。
最初にLDL-Cの管理目標値の達成を目指します。
LDL-Cの管理目標が達成されていて、non-HDL-Cが高い場合は、TGが高いかHDL-Cが低いか、もしくはその両方であり、次に治療薬のあるTGの管理を考えます。

二次予防(再発予防)
LDLC <100 (ただし、急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞があればさらに厳しく⇒<70
Non-HDLC <130 (ただし、急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞があればさらに厳しく⇒<100

一次予防(発症予防)
低リスク
LDLC <160 
Non-HDLC <190 
中リスク
LDLC <140 
Non-HDLC <170 
高リスク
LDLC <120(糖尿病で、PAD、網膜症・腎症・神経障害や喫煙ある場合は<100
Non-HDLC <150 (糖尿病で、PAD、網膜症・腎症・神経障害や喫煙ある場合は<130

中性脂肪(TG)の管理目標値は、リスク管理区分にかかわらず、空腹時<150、随時<175

HDLCの管理目標値は、リスク管理区分にかかわらず、≦40

脂質異常症の鑑別診断
1)脂質異常症のスクリーニング
①血清脂質(TC、TG、HDL-C、LDL-C and/or non-HDL-C)
②家族歴
③身体所見(角膜輪、黄色腫、甲状腺腫など)
2)脂質異常症の表現型の決定(Ⅰ-V型高脂血症ないし低HDL-C血症)
Ⅰ型はカイロミクロン、Ⅱa型はLDL、Ⅱb型はLDLとVLDL、Ⅲ型はレムナントリポ蛋白、Ⅳ型はVLDL、V型はカイロミクロンとVLDLが増加。
①リポ蛋白分画(電気泳動法など)
3)脂質異常症の原因の検索
①原発性脂質異常症の鑑別(家族性高コレステロール血症、家族性複合型高脂血症、家族性Ⅲ型高脂血症など)
アポリポ蛋白、遺伝子検査など
②続発性脂質異常症の鑑別
ホルモン検査、画像検査、内服薬など

脂質異常症の治療
一次予防では、原則として3~6ヵ月間は生活習慣病の改善を行いその効果を評価した後に、薬物療法の適用を検討します。いづれの管理区分においてもLDL-C180mg/dl以上が持続する場合は生活習慣病の改善とともに薬物療法を考慮します。

治療の選択
1)続発性に脂質異常症をきたしうる原疾患の有無を確認し、原疾患があればその治療を行う。
2)高コレステロール血症では、家族性高コレステロール血症(FH)を鑑別し、その他の著しい高脂血症や低脂血症ではFH以外の原発性脂質異常症を鑑別する。
3)それ以外の脂質異常症(生活習慣病による)は、個々の危険因子①冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞あり⇒二次予防、②糖尿病・慢性腎臓病(CKD)・末梢動脈疾患(PAD)あり⇒一次予防の高リスク病態、③年齢・性別・脂質異常症・高血圧・糖代謝異常・喫煙あり⇒高リスク、中リスク、低リスクに分類)を評価。
4)生活習慣の改善+薬物療法を行う。

高LDLC血症 LDL-C低下薬
基本はスタチン
スタチン単独では十分なLDL-C低下効果が得られない場合の併用薬として、まずはエゼチミブ、そしてよりハイリスクと考えられる患者では、PCSK-9阻害薬を考慮します。
尚、スタチンの継続服用が困難な状態の場合には、スタチンの代替薬としてエゼチミブレジンが選択肢となります。

高TG血症 TG低下薬
フィブラート系薬n-3系脂肪酸選択的PPARαモジュレーター等があります。
最近の臨床試験では、スタチンでLDL-Cが管理された状態で行われることがほとんどであり、著明な予防効果が見えにくい現状があります。
基本的には高TG血症は、LDL-C管理後の治療ターゲットであることを留意します。

原発性脂質異常症

家族性高コレステロール血症(FH)
成人の診断基準
1. 高LDL-C血症(未治療時のLDL-C値180mg/dl以上)
2. 腱黄色腫(手背、肘、膝またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫
3. FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴

家族性複合型高脂血症の診断基準
1. Ⅱb型を基準とするが、Ⅱa、Ⅳ型の表現型もとり得る
2. アポリポ蛋白B/LDL-C>1.0またはsmall dense LDLの存在を証明する
3. FHや糖尿病などの続発性高脂血症を除く
4. 第1度近親者にⅡb、Ⅱa、Ⅳ型のいずれかの表現型の高脂血症が存在し、本人を含め少なくとも1名にⅡb型またはⅡa型が存在する

家族性Ⅲ型高脂血症の診断基準
1. 血清コレステロール値、血清TG値がともに高値を示す
2. 血漿リポ蛋白の電気泳動でVLDLからLDLへの連続性のbroad βパターンを示す
3. アポリポ蛋白の電気泳動で、アポリポ蛋白Eの異常を証明する

原発性低HDL血症
HDL-C<25mgでは、原発性低HDL-C血症の可能性がある
二次性低HDL-C(外科手術後、肝障害、自己免疫性疾患、プロブコール内服歴など)の除外
タンジール病、LCAT欠損症、アポリポ蛋白A-1欠損症の鑑別

食事療法
危険因子を改善する食事
高LDL-C血症
総エネルギー摂取量の適正化と脂肪エネルギー比率の低下。
LDL-Cを上昇させるコレステロール(200mg/日未満)、飽和脂肪酸(エネルギー比率として7%未満)、トランス脂肪酸の摂取を減らす。肉の脂身、動物性の脂(牛脂、ラード、バター)、加工肉製品、乳類、臓物類、卵類を減らす。
日本食パターンの食品構成となる食物繊維と植物ステロールを含む未精製穀類、海藻、きのこ、緑黄色野菜を含めた野菜および大豆・大豆製品の摂取を増やす。

高TG血症
適正体重を維持または目指すように総エネルギー摂取量を考慮する。
炭水化物エネルギー比率を低めするために、炭水化物を多く含む菓子類、糖含有飲料、穀類、
糖質含有量の多い果物の摂取を減らす。
n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚類の摂取を増やす。
アルコールの摂取をできるだけ減らす(近年は飲酒による総死亡リスクの保護効果は認められず、虚血性心疾患に有意な効果も認められていない)

高カイロミクロン血症
脂肪の摂取を総エネルギー摂取量の15%以下に制限する。
調理に中鎖脂肪酸トリグリセライド(MTC)オイルを使用することも検討する。
アルコールの摂取をできるだけ減らす(近年は飲酒による総死亡リスクの保護効果は認められず、虚血性心疾患に有意な効果も認められていない)

低HDL血症
適正体重を維持する、または目指すように総エネルギー摂取量を考慮する。
炭水化物エネルギー比率を低くする。
トランス脂肪酸の摂取を控える。

参考文献:
「脂質異常症診療ガイドライン 2023年版 日本動脈硬化学会」
「日本内科学会雑誌 114⑩ 膠原病への最新アプローチ 日本内科学会」

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