梶が谷駅前内科クリニック
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糖尿病関連腎臓病の最新治療法
糖尿病性腎症は、糖尿病に特異的な腎疾患の呼称として長く用いられている。しかし合併症制御を目的とした血糖・血圧管理、レニンーアンジオテンシン系阻害薬の介入、併存疾患や薬剤の影響により、糖尿病性腎症自体の表現型も変容しつつあります。こうした複雑化した腎病変を踏まえ、「糖尿病関連腎臓病」という概念が新たに定義されました。
腎ハイリスク群の抽出には依然として尿アルブミンが最も有用であり、eGFR slopeも、実際には連続的腎機能低下の尺度であり、真に新しい指標とは言い難いです。
腎ハイリスク群においてSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、フィネレノンはそれぞれ腎保護効果を示し、併用することでおよそ58%のリスク低下が得られるとされています。
1.骨太の治療方針
糖尿病関連腎臓病は未だ疾患概念であり、病態に基づいた治療方針を明確化することはできないです。したがって、便宜上、尿アルブミンを主な基準とした腎症病期分類に基づいた治療方針が示されます。
血糖管理では無秩序な高インスリン血症とさけ、血圧管理では糸球体虚血にも十分注意します。
現在の腎症進展予防・治療は臨床的エビデンスを有するSGLT2阻害薬、フィネレノン、GLP-1受容体作動薬をいかに積極的に導入できるかにかかっています。
腎機能の持続的低下や尿アルブミンを伴う症例では病理学的異常が明らかなに生じています。生活習慣の改善に過度に期待してエビデンスを有する薬剤投与が遅れるということがないようにします。
2.生活介入・食事療法
生活介入・食事療法は薬物療法の上位にある訳ではなく、根拠ある薬物療法とともに実施すべきことです。
禁煙は極めて重要であり、運動療法については、実施困難な症例を除き、すべての症例において実施すべきであります。
高血圧や体液量増加を伴う場合には、食塩摂取量を1日6g未満としますが、猛暑や夏季の屋外活動時には柔軟な対応が求められます。
たんぱく質制限については、そのベネフィットとリスクを十分に説明できるだけのエビデンスが乏しいです。
糖尿病診療ガイドライン2024においては、腎機能の急速な低下が認められる症例、持続性蛋白尿を呈する症例、腎不全期の症例において、食事介入による効果が栄養障害を含むリスクを上回ると判断される場合に限り、たんぱく質制限(0.6~0.8g/目標体重kg/日)、高齢者・サルコペニアを伴う場合は0.8g/目標体重kg/日)を検討してもよいとされています。ただし、この介入の有効性を裏付ける十分なエビデンスは未だ存在しないことを念頭に置き、慎重に導入する必要があります。
ただし、極端な高たんぱく食は腎機能の悪化に関与します(特にウェイトトレーニング等での過剰プロテイン摂取症例で経験します)。特に、SGLT-2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など、糖尿病合併症に対して有効性が認められ、かつ体重減少を惹起し得る薬剤を併用する場合には、本当にたんぱく質制限を行うべきか否かを慎重に判断する必要があります。
3.各病期における介入
1)正常アルブミン尿期(第1期)
腎症第1期から第2期への進展抑制に血糖コントロールは根拠があります。食事、運動療法、薬物療法によりHbA1C7.0%未満を目標とします。
2型糖尿病症例ではインスリン抵抗性改善を重視し、内因性・外因性の高インスリン血症は回避します。腎機能低下(eGFR60ml/分未満)がある症例や、ΔeGFR-2~ー3ml/分/年などの急激に低下する症例ではSGLT2阻害薬を治療の中心とする必要があります。
血圧は130/80mmHg以下を目標とし、ACE阻害薬もしくはARBなどのRAS阻害薬、カルシウム拮抗薬、あるいはサイアザイド利尿薬を考慮するが、尿アルブミン陰性症例において必ずしもRAS阻害薬は必須ではありません。尿アルブミンが陰性であっても病理学的には結節性病変などを伴うことも知られ、持続的腎機能低下がある際には、糸球体虚血の可能性を排除しつつ尿アルブミンを有するハイリスク症例と同様な集約的介入を躊躇しないようにします。
2)微量アルブミン尿期(第2期)
この段階での適切な治療介入が予後を大きく左右します。尿中アルブミン尿排泄量が正常アルブミン尿域に回復する、いわゆる寛解は、腎予後のみならず心血管イベントのリスク軽減にも寄与することが占めされています。
SGLT2阻害薬を基本薬剤として導入し、SGLT2阻害薬の有無にかかわらずアルブミン尿が残存する症例では、フィネレノンを積極的に検討します。
治療目標は、第1期への寛解であり、高インスリン血症を避けつつ、血糖管理とRAS阻害薬および不十分な場合にはカルシウム拮抗薬もしくはサイアザイド利尿薬を用いた血圧管理(130/80mmHg)を行います。
3)顕性アルブミン尿期(第3期)
適切な治療介入を行うことで、第2期、さらには第1期への寛解が十分に期待されます。使えない場合を除き、SGLT2阻害薬はもはや治療に欠かすことができない基本薬剤であり、フィネレノンの積極的な導入が必要です。特にインスリン抵抗性が高度な高リスク症例などでは、GLP-1受容体作動薬セマグルチドの併用も検討します。
血糖および血圧の厳格な管理に加え、塩分摂取の制限も治療上重要な要素です。たんぱく質制限については、明確なエビデンスが不足しています。
運動療法は、網膜症、壊疽、不安定狭心症などの明確な禁忌がない限り、積極的に取り入れる必要があります。
高血圧に関しては治療抵抗性を呈することも多く、RAS阻害薬に加えて、カルシウム拮抗薬、さらに体液量の増加が認められる症例ではサイアザイド系利尿薬を適宜用い、130/80mmHg未満の達成を目指します。
心不全の高リスクあるいは合併症例ではARNIの導入を考慮し、体液量のコントロールが困難な場合にはトルバプタンの使用も選択となります。
腎性貧血が存在する場合には、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の投与によって貧血の是正を図ります。
4)GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)以降
第4期では、尿毒素の蓄積や体液調節機構の破綻が顕在化しています。
この段階においても、尿アルブミンの有無をを問わずSGLT2阻害薬は腎機能の進行抑制に有効であり、フィネレノンの応用も引き続き可能です。
厳格な血糖管理が末期腎不全期の糖尿病症例の予後を明確に改善するというエビデンスは乏しいが、適切な血糖管理は不可欠です。
食事療法および運動療法の意義も変わらず大きいです。
血糖管理にはインスリンおよび一部の経口血糖降下薬が中心となりますが、低血糖発症リスクが増加する点には留意する必要があります。
ビグアナイド系薬剤および長時間作用型スルホニル尿素薬は禁忌です。グリニド系薬剤のうち、ミチグリニドおよびレパグリニドは使用可能です。
チアゾリジン誘導体も高度な腎障害では禁忌とされています。αグルコシダーゼ阻害薬およびインクレチン関連薬については、消化器症状の出現に注意を払い、DPP-4阻害薬のうち、リナグリプチンおよびテネリグリプチンは、腎機能にかかわらず通常用量での使用が可能ですが、あくまでも血糖低下作用を期待してのものであり、合併症進行抑制に対する直接効果は期待できないとされます。
血圧管理の重要性は一層高まるが、管理が困難なことも多く、多剤併用が求められる症例も少なくないです。SGLT2阻害薬により心不全が抑制され、体液量の調整が容易になることで、血圧のコントロールが改善されることも経験されます。
尿アルブミンまたは尿蛋白陽性症例では、RAS阻害薬が治療の基本となりますが、腎機能悪化や高カリウム血尿のリスクには注意が必要となります。
4.糖尿病性腎症としては非典型的な経過を辿る糖尿病関連腎臓病への対策
腎機能低下を伴いながらも尿アルブミンを伴わない症例が存在します。
数年前からのeGFR推移があればそのデータ推移を見るのが最も有効であり、シスタチンCを基準としたeGFR(シスタチン)を推算も行うと良いです。eGFR(シスタチン)が正常であれば、低下したeGFR(クレアチニン)は筋肉量などの影響も考えられます。また、RAS阻害薬が不必要に多量投与されてないか、また既往歴(膀胱機能障害、前立腺肥大、妊娠高血圧腎症、若い頃の腎盂腎炎など)やNSAIDといった常用薬などを詳細に聴取し、腎障害を惹起しうる原因が存在しないか考察します。心不全の影響も重要です。繰り返す腎盂腎炎などの例を除き、やはりSGLT2阻害薬は介入治療の中心となります。
参考文献:
「日本内科学会雑誌 115② 大学・中核病院での循環器治療後に、近隣クリニック外来で注意するべきポイント 日本内科学会」
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