ウイルス性肝疾患の診断と治療

1.慢性ウイルス性肝炎の疫学
世界では慢性ウイルス性肝炎による死者が毎年100万人以上です。
世界保健機構(WHO)では、2030年までにウイルス性肝炎のeliminationの戦略をたて、年間の死亡率を65%削減新規感染を90%減少を目標とし、世界的なウイルス性肝炎に対する検査、治療等の対策が進行しています。

慢性ウイルス性肝炎に対する治療は、近年目覚ましく進歩しております。
C型慢性肝炎に対するウイルス蛋白を直接的にターゲットとしたdirect acting antivirals (DAAs)の開発により、治療を導入したほぼ全ての患者でのウイルス排除が可能となりつつあります。
B型慢性肝炎に対しても安全で耐性ウイルスの生じにくい核酸アナログ製剤の登場により肝炎の制御が多くの症例で得られるようになりました。

2.C型慢性肝炎
C型肝炎ウイルス(HCV)は、プラス鎖RNAウイルス。
C型肝炎ウイルスキャリアは、全世界で5800万人、日本で90万~130万人と推定されています。C型肝炎治療の目標は、HCV持続感染による慢性肝疾患の長期予後の改善、肝発癌ならびに肝疾患関連死を抑制するために、抗ウイルス療法によるHCVの排除を目指す。長らくHCV治療の中心であったインターフェロンは副作用も強く、有効性も十分とはいえなかったが、近年、HCVウイルス蛋白を直接的にターゲットとしたDAAs製剤が開発され、現在では、非代償性肝硬変も含めたほぼ全てのC型慢性肝疾患に対して抗ウイルス治療が可能となった。
ウイルス増殖過程において重要な役割の非構造蛋白(酵素活性を有する蛋白と複製複合体形成に重要な蛋白)がDAAsのターゲット。

HCVの感染経路は、HCVに汚染された体液を介して起こるが、感染源不明な例が半数を占めているといわれている。
HCV感染すると、急性の経過で治癒するものが約30%、約70%がHCV感染が持続する慢性肝炎となる。HCV感染による炎症の持続により肝線維化が惹起され、肝硬変や肝細胞癌へと進展する。典型例では、AST, ALTの上昇を伴って緩徐に進み、肝線維化の進展とともに発癌のリスクも高率になる。

C型慢性肝疾患に対する治療
DAAs治療歴なしの慢性肝炎に対しては、グレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠8週間治療、または、ソホスブビル+レジパスビル併用療法12週間の治療が推奨されています。
DAAs治療歴なしの代償性・非代償性肝硬変に対しては、グレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠12週間治療、または、ソホスブビル+レジパスビル併用療法12週間の治療が推奨されています。

3.B型慢性肝炎
現在、約4億人のB型肝炎ウイルス(HBV)感染患者が世界に存在することが想定されています。日本では、感染率が1%と推定されています。
日本ではHBV感染は主に母子感染と想定され、出産時ないし乳幼児期に暴露、感染し多くが持続感染となる。
その多くは、青年期にHBe抗原セロコンバージョン(HBe抗原が陰性化し、HBe抗体が陽性化する)が起こり肝臓での炎症が軽微な非活動性キャリアとなり、病態は安定化する。一方で、約10%程度は、肝臓での慢性的な炎症が持続し肝硬変、さらには、肝細胞癌、肝不全に進行し得る。そのため、持続的な肝炎を生じている症例に対しては、抗ウイルス薬の投与が必要となる。

B型慢性肝炎に対する治療
肝炎の活動性と肝線維化進展の抑制による肝不全、肝癌への進展の抑制、最終的には、生命予後ならびにQOLの改善とされます。
最終目標のサロゲートマーカーとして、HBs抗原消失に設定されている。
一方、抗ウイルス治療の短期目標は、ALT持続正常化、HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性、HBV DNA増殖抑制となります。
慢性肝炎の治療対象は、HBe抗原の陽性・陰性にかかわらず、ALT31U/ⅼ以上かつHBV DNA量2000IU/ml以上の症例とされます。そのほか、ALTが軽度あるいは間欠的に上昇、40歳以上でHBV DNA量が多い、血小板数が15万未満、肝細胞癌の家族歴のある、画像所見で線維化進展が疑われる症例などが治療を検討します。
慢性肝炎に対する初回治療は、Peg-インターフェロン(IFN)単独治療がまず考慮されます。また、核酸アナログ製剤を使用する場合には、薬剤耐性獲得のリスクが少ないエンテカビル(ETV)、テノホビル(TDF)、ベムリディ(TAF)が第一選択薬として推奨されています。
肝硬変に対しては、初回治療より核酸アナログの長期継続投与が推奨されます。

参考文献 :日本内科学会雑誌 113-1 January 10 2024 参照

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