コレステロールが高い、中性脂肪が高い

脂質は体になくてはならない重要な栄養素の1つです。
血液中に含まれる脂質を血中脂質といい、主なものはコレステロール中性脂肪です。

同じ脂質でも、コレステロールと中性脂肪は役割が違います

脂質異常症の定義
LDLコレステロール値が140mg/dL以上
HDLコレステロール値が40mg/dL未満
中性脂肪(トリグリセリド)値が空腹時採血で150mg/dL以上・随時採血で175mg/dL以上
non-HDLコレステロール値(総コレステロール値ーHDLコレステロール値)が170mg/dL以上

脂質異常症の治療 特に運動療法
生活習慣の改善が根幹であり、薬物療法中も生活習慣の改善を行うべきとされています。
運動療法として、中強度以上の有酸素運動を中心に定期的に(毎日合計30分以上を目標(少なくとも週3日は実施すること)に)行うことが推奨されています。
1日の中で短時間の運動を数回に分けて合計して30分以上としてもよい(例:10分間の運動を3回実施で合計30分間)。
掃除、洗車、子どもと遊ぶ、自転車で買い物に行くなどの生活活動のなかで身体活動量を増やすことからはじめてもよいとされます。

コレステロールの種類
コレステロールには、結合しているリポタンパク質の種類により、HDL(high density lipoprotein)コレステロールLDL(low density lipoprotein)コレステロールに大別されます。
尚、リポ蛋白には、大きく分けると、上記を含む4種類あります。
カイロミクロンVLDL(Very low density lipoprotein)、LDLHDLがあります。カイロミクロン⇒HDLの順に密度(density)が高くなり、逆に、HDL⇒カイロミクロンの順に大きさ(サイズ)が大きくなります。
HDLコレステロール善玉コレステロールとも呼ばれ、血管の壁に溜まっているコレステロールを肝臓に運ぶ働きがあります。
LDLコレステロールは、悪玉コレステロールとも呼ばれ、肝臓に蓄積されたコレステロールを体のあちこちに運んでいます。
LDLの中でも小型で比重の高いLDLは、small denseLDLと呼ばれ、酸化されやすく、動脈壁内に透過しやすいため、正常サイズのLDLよりも強力に動脈硬化を引き起こすことが分かっています。このため小型LDLを超悪玉コレステロールと呼んでいます。
その他、中性脂肪は、LDLコレステロールとは別の隠れた悪玉を検出するのにも役立ちます。
血液中には、悪玉と言われるLDLや善玉と言われるHDL以外にも数種類の玉が流れています。隠れた悪玉はその1つで、レムナントと呼ばれます。カイロミクロンレムナント、VLDLレムナントなど。
レムナントは通常ほとんど検出されませんが、生活習慣が乱れたりお酒が増えたりするとレムナントの数も増えて動脈硬化の原因になります。
レムナントは、中性脂肪をたくさん抱えているので中性脂肪の値が高いとその存在が疑われます
LDLコレステロールの値が高くなくても中性脂肪の値が150 mg/dLよりも高い場合にはこのレムナントがいるかもしれません。

コレステロールの働きと生合成
コレステロール細胞膜を構成する成分であり、ホルモン(性ホルモン、ステロイド)胆汁酸、ビタミンDなどの原料となり、生命維持に欠かせない重要な物質です。

体内で必要なコレステロールの大部分は、主には肝臓で、その他小腸などで生産されています。糖質や脂肪酸から生じたアセチルCoAという物質から、1日に体重1kgあたり12~13mg(体重50kgの人で600~650mg/日)体内で産生されます。

一方、食事からのコレステロールは、体内で合成されるコレステロールの20%前後のみです。
食事からのコレステロールの摂取量が多い場合には、体内での合成量は少なくなるように調節され、反対に食事からのコレステロールの摂取量が少ない場合には、体内での合成量が多くなるように調節されています。

コレステロールを多く含む食品には、卵類、魚介類、肉類、菓子類があります。食事によるコレステロールの摂取量は、血中コレステロール値に影響はないと言われておりますが、コレステロールの量が調節されずバランスが崩れるなどの異常が起こると、血液中のLDLコレステロール値が高くなりますので、摂取量に注意が必要です。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、脂質異常症の重症化予防を目的(既に、高コレステロール血症の方、動脈硬化の危険因子がある方)として、コレステロールを200mg/日未満に留めることが望ましいとされています。

コレステロール含有量(可食部 100gあたり)
卵類
鶏卵(全卵)370㎎/100g (Mサイズ1個殻つき 60g)
鶏卵(卵黄)1200㎎/100g (Mサイズ1個 16g)
魚介類
いくら(しろさけ)480mg/100g (大さじ1杯 18g)
しらす干し(半乾燥)390㎎/100g (大さじ1杯 5g)
肉類
にわとりのレバー(生)370㎎/100g (1人前 100g)
ぶたのレバー(生)250㎎/100g (1人前 100g)
にわとりの手羽先 皮つき(生)120㎎/100g (1本骨付き 60g)
菓子類
カスタードプリン 120㎎/100g (1個75~100g)
シュークリーム 200㎎/100g (1個75~100g)

コレステロールが高い場合の原因と改善方法
①食事からのコレステロールの摂取量を減らす、または腸からの吸収を抑制する。
②体内でコレステロールの処理を行うLDL受容体の合成を促進する、または、LDL受容体の合成低下を抑える
③体内のコレステロールを処理し、胆汁酸として排出を促進する。
コレステロールの合成を高める糖質や脂肪酸の過剰摂取を抑える

具体的には、
飽和脂肪酸(脂身のついた肉、ひき肉、鶏肉の皮、バター、ラード、やし油、生クリーム、洋菓子)の取りすぎがあり、控える。
トランス脂肪酸(トランス型不飽和脂肪酸)の多い食品(マーガリン、洋菓子、スナック菓子、揚げ菓子)の取りすぎがあり、控える。
コレステロールの多い食品(動物性のレバー、臓物類、卵類)の取りすぎがあり、控える。コレステロールの摂取は1日200mg未満に減らすことでLDLコレステロールの低下が期待できる。
食物繊維の多い食品(未精製穀類、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、こんにゃく)を増やす。
多価不飽和脂肪酸、とくにn-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3)の多いエゴマ油、亜麻仁油、さば・いわしなどの青背の魚や、n-6系多価不飽和脂肪酸(オメガ6)の多い大豆油、コーン油、ごま油などを摂取する。また、ナッツには、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸が多く含まれます。
油脂類(オイル)の脂肪酸成分表
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/24/1365491_3-0214-1.pdf
種実類(ナッツ)の脂肪酸成分表
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/01/15/1365491_3-0205-1.r2_1_1.pdf

適正な総エネルギー摂取量のもとで、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を減らし、あるいは飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を他の不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸(n-3系多価不飽和脂肪酸、n-6系多価不飽和脂肪酸))に置換することで動脈硬化硬化性疾患の発症の予防のために推奨されている。

高コレステロール血症の治療薬
①HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)
プラバスタチン(リバロ)
シンバスタチン(リポバス)
ロスバスタチン(クレストール)
ピタバスタチン(リバロ)
アトルバスタチン(リピトール)など
肝臓内のコレステロール合成の律速酵素のHMG-CoA還元酵素を阻害し、肝細胞内でのコレステロールのプールを減少させる。また、その結果としてLDL受容体の合成亢進をし、血中からのLDLコレステロールの取り込みを促進しコレステロール低下作用を示す。

②小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)
エゼチミブ(ゼチーア)
小腸粘膜細胞管腔側のNPC1L1を阻害して、小腸における食事および胆汁からの腸管コレステロールの吸収を阻害する。

③陰イオン交換樹脂(レジン)
コレスチミド(コレバイン)
コレスチラミン(クエストラン)
小腸腸管内で胆汁酸と結合し脂質(コレステロール含む)の吸収阻害と共に小腸での胆汁酸の再吸収を抑制し、便中への排泄を促進し、肝臓内でコレステロールから胆汁酸への異化を促進する。その結果として、肝臓内のコレステロールプールが減少し、LDL受容体の合成亢進をし、血中からのLDLコレステロールの取り込みを促進しコレステロール低下作用を示す。

④PCSK9阻害薬
エボロクマブ(レパーサ)
アリロクマブ(プラルエント)
PCSK9は主に肝臓内で合成分泌されLDL受容体に結合する。PCSK9と結合したLDL受容体は細胞表面にリサイクリングされず分解される。PCSK9の阻害によりLDL受容体が安定化しLDLコレステロールの低下作用を発揮する。

⑤ミクロソームトリグリセライド転送蛋白(MTP)阻害薬
ジャクスタピッド(ロミタピド)
肝臓ではコレステロールや中性脂肪をもとにMTPによりリポ蛋白を再構築し、血中にVLDLとして分泌する。MTP阻害薬はVLDL、カイロミクロンの形成を阻害することで分泌が抑制され血中脂質(コレステロール)低下作用を発揮する。

中性脂肪
中性脂肪は脂肪組織に蓄えられてエネルギー貯蔵庫としての役目や、皮下脂肪となって体温の保持、衝撃から体を守るクッションの役目を果たしています。

血液中の中性脂肪
小腸で吸収された後から肝臓に運ばれるまでの間の中性脂肪量と肝臓から血液中に出て各臓器に配られるまでの間の中性脂肪量とを合わせたものが数値で表わされています。
血液中を流れる中性脂肪の役割は、臓器や筋肉が必要とするエネルギー源として使用される、また、脂肪細胞においてエネルギー源として蓄えるられる役割があります。

中性脂肪の構成
中性脂肪は、3つの脂肪酸1つのグリセロール(グリセリン)から成り立っています。

お酒(アルコール)と中性脂肪の関係
お酒を飲むと中性脂肪が増加します
アルコールが肝臓に入ると、中性脂肪の原料である脂肪酸を作る酵素(SREBP-1c)の働きが高まり、一方で脂肪酸の燃焼を促す酵素(AMPK)の働きが抑制され、中性脂肪の原料が肝臓に溜まっていくき、中性脂肪が次々と合成されます。
またアルコールの分解の過程で出てくるアセトアルデヒド(二日酔いの原因物質)は、中性脂肪の分解や脂肪酸の燃焼に預かるPPAR-αの働きを抑えるので、中性脂肪は分解されずに残ります。

中性脂肪が高い場合の要因と改善方法
中性脂肪の高値の要因としては、エネルギー量のとりすぎ、特に甘いものや酒・油もの・糖質(炭水化物)のとりすぎがあります。砂糖の入ったソフトドリンクを飲む習慣のある人も多い傾向があります。
エネルギー量の取りすぎを改めて、運動や減量(ダイエット)を行うことで、中性脂肪を下げることができます。また背の青い魚に多く含まれるn-3系(ω-3系)多価不飽和脂肪酸には、中性脂肪を下げる働きがあります。

参考文献
「全国健康保険協会 健康サポート」
「健康長寿ネット 栄養素」
「CRC よくある検査のご質問」
「日本動脈硬化学会 一般の皆様へ 健康の生活のために」
「厚生労働省 e-ヘルスネット」
「Kowa 中性脂肪.jp]
「オレオサイエンス 第 10 巻第 12 号(2010)」
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
「文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 

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