肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌は、主要な呼吸器病原性菌です。
肺炎球菌には、菌表層の莢膜ポリサッカライド(CPS)の抗原性による少なくとも100種類の血清型があります。

23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)
主要な23血清型のCPSを含む23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)が、2014年10月から65歳以上の定期接種ワクチンとなりました。
2024年度から65歳の者及び60歳以上65歳未満で日常生活が極度に制限される程度の基礎疾患を有する者を対象として、PPSV23による定期接種が継続しています。

7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7)、PCV13、PCV15、PCV20
CPSにキャリア蛋白質を結合させた7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7)が2013年4月から小児を対象に定期接種が導入され、同年11月からPCV13に切り替わりました。
2022年9月に成人用PCV15、2024年8月に成人用PCV20が販売承認されています。

肺炎球菌ワクチンによる特異抗体産生とその機能
PPSV23の初回接種により特異抗体応答が認めれるが、PPSV23にはメモリーB細胞を誘導できないためPPSV23の2回目以降の接種による特異抗体のブースター効果はありません
一方、PCVはCPS抗原に無毒性変異ジフテリア毒素(キャリア蛋白)を結合しており、キャリア蛋白がCPS特異的B細胞内で抗原提示されるため、初回以降に接種されたPCVでメモリーB細胞の応答を介して血清型特異的IgG抗体が産生誘導される

国内の成人侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)サーベイランスから得られた知見
PPSV23のワクチン有効性
2014年からの解析で、成人IPD患者のPPSV23接種の情報を用いて、ワクチン接種後5年間の有効性は、PPSV23血清型によるIPD患者の調整後の有効性は42.4%と中等度の効果が示された。

小児及び成人定期接種導入後の成人IPD患者数の変化
2013年から2019年の成人IPD患者の解析で、PCV13に特有な血清型によるIPD患者の割合は、15から64歳、65歳以上のいずれの年齢においても有意に減少している。これは小児PCV13導入による間接効果と考えられている。

COVID-19パンデミックの経験から見えてきた季節性インフルエンザの役割

季節性インフルエンザ先行ありのIPD患者では、菌血症を伴う肺炎の割合が15歳から64歳では84.2%、65歳以上では87%と高率であった。
これまでもインフルエンザパンデミック後のIPD発症についてはよく知られた事実であったが、COVID-19パンデミックの経験を契機に、季節性インフルエンザの先行感染によるIPD発症と65歳以上での高い死亡リスクについて明らかにされた。
高齢者における肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの重要性が再認識されることとなった。

成人用PCV13、PCV15、PCV20の導入と臨床的位置付け
PCV13は、2013年6月から5歳未満の小児、2014年6月から65歳以上の成人に適応が拡大された。
65歳以上の成人に対するPCVの安全性はPPSV23と同等、免疫原性は同等もしくは優れているとされる。
プラセボ対象二重盲検比較試験において65歳以上で、PCV13血清型による市中肺炎を45.6%予防し、ワクチン血清型によるIPDを75%予防している。
成人用PCV152022年9月より承認され、有害事象(安全性)は、PCV13に対して非劣勢(同等)、免疫原性は非劣勢(同等)とされた。
成人用PCV20は、2024年8月より承認された。これまでのところ、PCV20の有効性に関する公表データはないが、PCV13と比較すると、成人の肺炎球菌感染症の予防域の幅を拡大できることが期待される。

参考文献:「成人を対象としたワクチン接種」日本内科学会雑誌 113⑪

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