認知症治療薬

認知症は脳の神経細胞が徐々に脱落することによって、脳の処理機能が低下する病気です。
現在、アルツハイマー型認知症の治療薬として用いられているのが、神経細胞を再生させたり、神経細胞が死ぬのを防ぐような病気の原因を治すものではなく、神経の機能を調整する薬です。
薬の効果は、症状をわずかに軽くする、進行をなだらかにすることは可能ですが、進行を止めたり、病気を治したりする効果までは認めておりません。
このたび、エーザイ社とバイオジェン社が共同開発した「アデュカヌマブ」が、米食品医薬品局(FDA)により承認されたというニュースが話題となりました。この薬は、認知症の臨床症状の悪化を抑制する初めての治療法となります。
アデュカヌマブは、アルツハイマー型認知症の患者さんの脳の中に比較的早期から見られ、病因の一因と考えられているアミロイドβを除去する抗体製剤であり、脳内アミロイドβの除去が臨床結果の改善をもたらすことを実証した初めての治療法となります。
今後の治療効果および日本での承認が期待されます。

ここでは、現時点での日本でこれまで使用されている治療薬に関してです。
認知症患者さんの脳全体の活動が低下する場合は元気がなくなったり、意欲・やる気がなくなってしまいます。このような場合には、脳を活性化する薬によって少し気力が回復する可能性があります。また脳の神経細胞の働きのバランスが崩れると、すぐ怒ったりイライラしたりするような症状になる場合もありますが、このようなケースでは脳の活動を穏やかにしたり、神経活動のバランスを調節する薬が使われます。
アルツハイマー病やレヴィー小体型認知症の患者さんの脳では、アセチルコリンという神経伝達物質が減少しています。神経伝達物質とは神経と神経の情報のバトンタッチに必要な物質で、減少すると脳のネットワークがうまく働かなくなってしまいます。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はアセチルコリンが分解されないように働き、脳の中でアセチルコリンが減るのを防ぎます。現在認可されているのは、アリセプト、レミニール、イクセロンパッチ、リバスタッチです。これらは脳を元気にしてくれる薬ですが、空回りしてしまうとイライラや攻撃性、焦燥感などが出ることがあり、その場合は減量もしくは中止したりします。メマリーや抑肝散(漢方)を併用することで薬を続けられることもあります。
また、アルツハイマー病では脳の中でグルタミン酸の働きが乱れ、神経細胞が障害されたり神経の情報が障害されたりします。
NMDA受容体というのは、グルタミン酸という神経伝達物質の受け皿ですが、NMDA受容体拮抗薬メマリーはグルタミンの働きを抑えることにより、神経伝達を整えたり、神経細胞を保護する可能性があります。
メマリーのよいところは、患者さんのイライラした感情を抑え、気持ちをおだやかにしてくれる働きがあることです。

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