ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬と心腎連関

1.高血圧、心不全、2型糖尿病を合併するCKDとミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)

原発性アルドステロン症などの血中のアルドステロン濃度の上昇によるミネラルコルチコイド受容体(MR)活性化によって高血圧、脳心血管病、CKDが発症・進展することが知られている。

2型糖尿病では、血中のアルドステロン濃度の上昇がみられなくともMRの活性化が生じ、脳心血管病、CKDに寄与することが知られるようになってきた。

MR拮抗薬は、アルドステロン症に加え、心不全、高血圧の治療薬として用いられ、
スピロノラクトン(アルダクトン®)、エプレレノン(セララ®)が心不全、高血圧を適応症とし、エサキセレノン(ミネブロ®)が高血圧を適応症としている。

ミネラルコルチコイドであるアルドステロンは心血管系に対してMR活性化を介した障害作用を有するため、MR拮抗薬には臓器保護効果がある。
そのためMR拮抗薬は、心不全(特に左室収縮能が低下したHFrEF)の治療薬として推奨されており、β遮断薬、SGLT2阻害薬、ARNIとともに心不全治療薬の標準的治療となっている。

MR拮抗薬は、体液量の恒常性の維持に関与するアルドステロンの作用に拮抗し、腎臓の遠位尿細管および接合集合管のMRに作用してカリウムの喪失なくナトリウム排泄を促進して降圧効果をもたらし、低レニン性高血圧、治療抵抗性高血圧に追加投与で降圧効果が認めれる。

MR拮抗薬
スピロノラクトン(アルダクトン®)は、MR阻害作用は強いが、MR選択性が低く、性ホルモンを介した副作用(女性化乳房、月経異常など)が報告されている。

エプレレノン(セララ®)は、性ホルモン受容体関連の副作用は軽減されたが、糖尿病合併高血圧やCKD合併高血圧においては、使用しづらい。

エサキセレノン(ミネブロ®)は、非ステロイド型構造で、本態性高血圧のほか、糖尿病合併高血圧、CKD合併高血圧への有効性、安全性も確認されている。

フィネレノン(ケレンディア®)は、同じく非ステロイド型構造で、2型糖尿病合併CKDの適応(高血圧がなくとも)をもつ唯一のMR拮抗薬である。

2.2型糖尿病を合併するCKDに対するミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)とSGLT2阻害薬の併用療法

心血管腎臓病(心腎連関)制御治療において治療効果の上乗せ効果が期待される。

3.心不全、高血圧とアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)

ネプリライシン(NEP)阻害薬は、Na利尿ペプチド(ANP, BNP, CNP)の血中濃度を上昇させることができる。

アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるサクビトリルバルサルタン(エンレスト®)は、NEP阻害薬のサクビトリルとARBのバルサルタンの2つの薬理作用を発揮し、心不全改善作用と降圧作用が認められる。

ARNIの腎臓に対する影響も注目されており、従来からのNa利尿剤(サイアザイド系利尿薬、ループ利尿薬)ではNa利尿作用・体液貯留改善とともに腎血流量とGFR低下作用を伴うのに対し、ARNIによって活性化されるNa利尿ペプチド系にはNa利尿作用・体液貯留改善の一方で腎血流量とGFRの増加作用が報告されている。

心不全を合併したCKD、中でも蛋白尿の少ないことが多い高血圧性腎硬化症において有用性が期待される。

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