尿酸が高い、痛風

尿酸とは
尿酸生物の情報とエネルギーという重要な役割を果たす物質(核酸:主成分はプリン体)の最終代謝産物。遺伝子を構成するDNAと情報を伝達するRNA、エネルギーを担当するATPが分解されると尿酸ができます。つまり尿酸は人体の情報やエネルギーを受け持つ物質(DNA, RNA, ATPなど)が分解されてできた老廃物です。

普通の人の体内では一日約0.6g(600mg)の尿酸が作られます。この尿酸の産生が多くなったり腎臓からの排泄が低下したりすると尿酸は体内に蓄積し、高尿酸血症となり痛風を起こします。一部は腸管から排泄され、腸管からの排泄が低下することによる高尿酸血症も提唱されています。

プリン体
核酸を構成する主成分。代謝によって尿酸となる。
細胞の核に存在する核酸の主成分であるアデニンやグアニンなどとして存在します。あらゆる生物の細胞内に存在するため、ほとんどの食品に含まれています。一般的にレバー(肝)・たらこ・白子など細胞数の多い食品には多く含まれ、アルコール飲料ではビールに多く含まれています。
体内には、食物から取り込まれるプリン体のほかにも、新陳代謝によって古い核酸が分解したもの、グルタミンやグリシンなどから合成されたものがあります。

痛風
痛風発作の原因は尿酸という物質。
尿酸はからだの中にも一定量あって、血液などの体液に溶けて循環し、尿の中に濾し取られて捨てられます。一部は、消化管から排泄されます。何らかの原因で血液中の尿酸の濃度が上昇して飽和濃度を越えると、からだの中に蓄積してきます。溶けなくなった尿酸はナトリウムと塩(えん)を作り、結晶になります。尿酸の濃度が高い状態が続くと、この尿酸塩の結晶が関節の内面に沈着してきます。
痛風発作は、尿酸塩に対してからだの防御機構である白血球が反応し、攻撃する時に起こります。
尿酸塩が関節に溜まると急性関節炎(痛風発作)になりますが、他の臓器にも溜まります。なかでも皮下にたまりやすく、皮膚の下に結節ができます(痛風結節)腎臓も尿酸が溜まりやすく、高尿酸血症や痛風の人は腎機能障害(痛風腎)に注意が必要です。

高尿酸血症
高尿酸血症とは、血液中の尿酸が高い状態のことです。尿酸の血液中の濃度は、男女ともにこの値が7.0mg/dLまでは基準値内です。これを超えると異常で、高尿酸血症と呼ばれます。
痛風や尿路結石、腎障害の原因となるほか、高尿酸血症がある人では、肥満や高血圧、脂質異常症、高血糖を複合的に合併することが多くなっています。また、脳卒中や心臓病などになりやすくなります。

高尿酸血症は、尿酸が作られる量が多すぎること、もしくは尿酸が上手に排泄されないこと、およびその両方が重なることが原因となります。
体の中では、新陳代謝によって細胞が分解されたりエネルギーを使うと、プリン体が作られ尿酸に代謝されます。細胞由来の尿酸は、食事由来のプリン体による尿酸の2倍ほどあります。ですから食事からとるプリン体を増やさないことはもちろん、細胞由来の尿酸を増やさない工夫が必要です。
高尿酸血症の食事療法では「細胞由来の尿酸を増やさない」'「食事由来のプリン体を増やさない」'「尿酸を上手に排泄させる」ことを目的に実施されます。

高尿酸血症の治療の基本

生活習慣を改善する

厳しい食事の制限は一定期間は実行できても多くは反動を招きます
現在の食生活の問題点を把握して改善の必要性をよく理解し、可能な範囲でストレスなく習慣付けることが大事です。

肥満のある人は肥満の是正、肥満のない人は肥満の予防
糖尿病の食事療法に準じた摂取エネルギーの適正化が必要です。
肥満体内でのプリン体の合成を促進し、食べすぎによりプリン体の摂取増につながります。またインスリン抵抗性を介した尿酸の排泄低下を招きます。

尿酸の原料となるプリン体の摂取制限
体内の細胞にもたくさんの尿酸の原料を持っていますので、過剰な摂取を制限するために特にプリン体の多い食品に気をつける程度でも結構です。
肉食、特に動物の内臓や肉汁にはプリン体が多く含み、痛風を増やします
海産物(魚介類)も痛風を少し増やします
野菜は痛風を減らし、乳製品も減らすと考えられています。

食品中のプリン体含有量 一覧
https://www.tufu.or.jp/pdf/purine_food.pdf
(帝京大学薬学部物理化学講座 薬品分析学教室 金子希代子教授提供を参照いたしております)
300mg以上 極めて多い
200~300mg 多い
50~100mg 少ない
50mg以下 極めて少ない
と分類されています。

プリン体を多く含む食品は、 レバー類(210~320mg/100g)、白子(300mg/100g)、一部の魚介類 エビ、イワシ、カツオ(210~270mg/100g)が上げられます。乾燥品である干椎茸や魚の干物は水分量が減っているため相対的に高い数字になっています。

飲酒習慣のある人は節酒および禁酒が必要
アルコール飲料は、それ自体にプリン体をあまり含んでいなくても、細胞由来の尿酸の産生量が多くなると同時に尿酸の排泄を抑制します。あわせておつまみとして動物性食品の摂取が多くなることで、プリン体の摂取量が増えます。
尚、アルコールが尿酸値を上げるのは、アルコールが体内で分解される時に尿酸が作られること、その際にできる乳酸が体内に尿酸を蓄積すること、一部のアルコール飲料(ビールなど)には尿酸の元になるプリン体が多く含まれていることなどがその主な原因です。
さらには食欲を増進して肥満へとつながりやすくなりますので、適正量の飲酒にとどめることが必要です。

尿酸の排泄を助けるために十分な飲水
飲水量を多くして尿量を増やすことで、尿酸の排泄を助けますし、尿路結石の予防にもなります。
飲水量は、1日2L以上の尿量を保つようにしますが、糖分の多いジュース・牛乳・アルコール飲料を水代わりに飲むことは慎んでください。

脈が少し速くなるウォーキング程度の有酸素性運動を行う(少なくとも10分以上の運動を合計1日30分以上または60分程度が最適)
短時間の激しい運動は無酸素運動となることが多く尿酸値を一時的に上昇させます。これに比較し、長時間の運動は有酸素運動となることが多く、尿酸値の上昇は比較的軽いと考えられています。ストレスや過剰な知的仕事などの脳活動も尿酸値を上昇させると考えられています。

痛風発作治療
1.非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
痛みどめ、炎症止めなどの薬
ロキソプロフェン(ロキソニン)
ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)など

2.コルヒチン
痛風発作の予兆期や、発作のごく初期であればコルヒチンは有効

3.副腎皮質ステロイド薬
強力に炎症を抑える作用がある薬
ただし、必要なのは重症例であり、一般の痛風発作に必要はなし

尿酸降下薬(尿酸を下げる薬)
1.尿酸産生抑制薬
アロプリノール(ザイロリックなど)
フェブキソスタット(フェブリク)
トピロキソスタット(トピロリック、ウリアデック)

2.尿酸排泄促進薬
ベンズブロマロン(ユリノ-ムなど)
プロベネシド(ベネシット錠など)
ドチヌラド(ユリス)

3.アルカリ化療法薬
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤(ウラリット)
尿酸値は下げないが、尿中の尿酸を溶けやすくして尿路結石を予防する薬

参考文献
「公益財団法人 痛風・尿酸財団」
「厚生労働省 e-ヘルスネット」

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