慢性腎臓病 腎機能保持を目指した食事療法(タンパク質)

タンパク質について
これまで過剰なタンパク質摂取が、腎臓(糸球体)での過剰な濾過を促進し、腎機能に悪影響を与えることや、タンパク質の代謝産物が腎機能低下時に尿毒症物質として蓄積することが知られています。

慢性腎臓病(CKD)進展防止に有効とされるタンパク質制限の目的は、これらのタンパク質負荷に伴う腎臓への悪影響を減らすことにあります。

一方、CKDのステージが進むとサルコペニア(骨格筋量の減少と筋力の低下)合併頻度が高くなり、サルコペニア合併のCKDでは、合併のない場合と比べ、予後が不良であることが知られています。サルコペニアの予防には、タンパク質摂取が有用な可能性があるとされます。
さらに、高齢者CKDでは、タンパク質を多く摂取していた群(0.8g以上/kg/日)で死亡リスクが低かった研究もあります(0.6~0.8g/kg/日と比較)。

2020年にupdateされた非糖尿病(糖尿病でない)CKDに対する低タンパク食の効果を調査した報告(Cochrane systematic review)によると、低タンパク食(0.5g~0.6g/kg/日)と通常タンパク質(0.8g/kg/日以上)の比較では、死亡リスクや末期腎不全に到達するリスクに対しても差がないことが示されました。

従来のタンパク質制限の有効性の研究は、体重変化やprotein energy wastingに関するデータが限られ、タンパク質制限に伴う生活の質への影響に関するデータも不足し、低タンパク食を推奨するには、タンパク質制限の副作用と生活の質への評価が必要ともされています。

尚、現在の日本でのタンパク質摂取量の基準として、CKDステージG3aで0.8g~1g/kg/日、ステージG3b以降では、0.6g~0.8g/kg/日が示されています。
サルコペニア合併CKDでは、総合的にタンパク質制限を緩和を判断することが示されています。

(参考文献:腎疾患・透析 最新の治療 2023-2025 南江堂)

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